代々木上原
中河与一 『天の夕顔』
「 小田急の代々木上原でおりて、あの箱根土地が開墾して
いる宏壮な分譲地を横ぎり、少しつまさきあがりにあがって、
草の青々と茂っているあたりを少し捜すと、すぐあの人の
うちがあったのです。
あまり高くない野生の松の木が一本。それは開墾の時残
されたものらしく、葉の色が黒く、あの人のうちの屋根にか
ぶさっていたのです。」
京都、神戸、沼津、東京、北アルプスと舞台を移しながら、
実ることのない恋が描かれます。
ここに出てくる「箱根土地」とは1920年に堤康次郎氏が
作った箱根土地株式会社のことです。これは後に国土計画、
コクドと名前が変わって、西武鉄道グループの親会社となりま
した。しかし、2006年にはプリンスホテルと合併して解散して
しまいました。
ちなみに、この作品は、1938年に発表されています。日中
戦争が始まり、国家総動員法が出される年です。戦中から戦後
にかけて多くの人達に読まれた小説です。
Good Study 良学舎